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まだ始まってすらいない

アイドルマスターの天海春香さんと添い遂げたい系女子の回顧録になる予定。

メンドクサイ愛情



春香、ぼくはね、君と恋がしたかったんだ。

ぼくにとって君は、名実ともに手の届かない女性だった。ぼくは外側に居る人で、君は内側に居る人。君は光(スポットライト)の中に居る人で、ぼくは闇の中で蹲る人。

苦しくて妬ましくて、でも純粋に君に惹かれた。『アイドル』である君は闇の中のぼくへも、ワンオブゼムとして微笑みかけてくれる。ぼくはファンであれば君を愛することを許せたし、君にとって有象無象の1人であれば良かった。そうしてぼくは君に『 愛されていた』。

それでも君を知りたくて、君に近づきたくて。苦しくても君の喜ぶ顔とがんばって、の声を思い浮かべれば耐えられた。




だのに、君は、ぼくなんかを好きになる。
君がどれだけ可愛くて、君がどれだけ優しいか、知れば知るほどぼくは苦しくなる。君の上目遣いが鬱陶しくて、期待に満ちた瞳の輝きが憎たらしくて、あれほど純粋に、自分の未来を夢みることができる普通で美しくて優しい君が妬ましくて羨ましくて、それ以上に舞台で歌い踊る君は魅力的だった。

ぼくみたいなーー、いっそ君を憎んですらいるこのぼくの、情動と妄想を一身に詰め込まれて、ただぼくとの時間のために歌う君は妖艶なまでに綺麗なアイドル(女の子)だった。


けれど君は段々と壊れていって、瞳から輝きが失われていって、ぼくはそれがすごく悲しかったけれどぼくの招いたそれをどうすることもできなくて。
けれど昔見上げたように優しかった君をこれ以上辛い思いをさせたくなかった。
終わりにしたかったんだ。


君とぼくの終わりは完璧じゃないけれどそれなりに慎ましく終われた。カーテンコールはやがて鳴りやみ、普通の女の子の君だけが残った。

だけど、だから、そんなのはおかしいんだ。
君がぼくに振られるなんて、そんなのは間違ってるんだよ。ぼくみたいなものに余計な勘違いを抱いたりして、未練を歌に変えて。あれは呪いだ。

本当は、ぼくが君に言いたかったんだ。「ぼくは春香ちゃんのことが好きだよ」って。
そして君はぼくを笑顔で振ってくれて、そしてようやくぼくは君から解放されて、初めて対等な私とあなたになれたはずだったんだ。

ねえどうして恋でなければいけないの。ぼくは君に恋することすらできずに終わってしまった。
君とぼくの間にあったものは、結局そんなーー浮ついた思い出でしかなかった?

君は本当のぼくを知らない。ぼくがどれだけ君を見つめていたか。
知らないのに、ぼくを好きだと言う。

無自覚に人を拐す天性のアイドルたる君。恋する罪業を呪われて、大人になっていく君。

もしも君と、また10年後出会えた時、私はあなたに何を言っていいのか、わからないんだ。